夜啼きの森
2005年5月15日 読書とか、マンガとか
ISBN:4043596049 文庫 岩井 志麻子 角川書店 2004/05 ¥540
面白かったです。面白い・・・というのが、的確な表現かはわかりませんが。とにかく、飽きさせない、次々読み進めたくなる、そんな小説でした。
これ、角川ホラー文庫なんですね。いわゆる、心霊的なホラーとはちょっと違うけど、心理的な、人間の奥底にある情念の怖さ・・・とでもいうのでしょうか。
「津山30人殺し」を題材としてる小説ですが、いわゆる残虐シーンというのは、終わりの数ページしかありません。事件を知るある女性の回想から始まり、それぞれの章が、主人公である事件を犯す男に何らかの関わりを持つ人たちの物語。それは、肉体的な関わりや、精神的な関わりや、世間的な関わりや。いろんな形での関わり方が、事件への布石となり、最後の最後、陰惨な出来事が発生する。
岩井さん自身が岡山県出身なんですね。だから、方言もリアルだし、取材もすごくされたんでしょう、情景とか状況が目に浮かぶようです。なんというか、田舎の山村の、ねっとりとした空気・・・のんびりとした日本の原風景、というものの裏に隠された、人の汗の臭いとか、体温の高さとか、それらがすごく伝わってきました。そして、もとを辿れば、みんなが血が繋がっている、その血の濃さに、身震いしそうでした。その濃さが、嫉妬したり、憎悪したり、愛したりする度合いを、何より高めているような。畏れられている森の、その不気味な様が、ありありと思い浮かぶ、そんな小説でした。
ドラマ版「砂の器」で、本浦千代吉も大量殺人を犯しましたが、あれにも、悲惨な背景があり、それも、ある寒村での事件で。おそらく、この「津山30人殺し」をモチーフにしてるんでしょうけど。
『人を殺す』理由は、それぞれで、だからといって、どんな理由でも決して、人を殺すことを肯定してはいけない。でも、罪を罪として裁く時、ただ人を殺したことのみ取り上げるのは、理不尽なことなのかもしれない。「家庭の境遇うんぬん〜」は、理由にならないと私は思うけど。でも、真実を知った時、殺された人に憎しみを抱く事件も、現実にはあったりします。
私が生まれる少し前に起こった、いわゆる「尊属殺人罪」をのちのち廃止するきっかけになった事件。詳しくは書きませんが。この事件の犯人の人生を知った時、涙が出そうになりました。もし、それが私だったら・・・と思ったら。そして、犯人と殺された男の間に生まれた子供たちの人生を思ったら。犯人が、それまで、どれだけの恐怖と憎しみと諦めを、その心の中に閉じ込めていたのかと思ったら。悲しく、そして、とても怖くなりました。
もしかしたら、”どうやって殺したか”を知るより、”なぜ殺すに至ったか”を知ることの方が、本当は怖いのかもしれません。
面白かったです。面白い・・・というのが、的確な表現かはわかりませんが。とにかく、飽きさせない、次々読み進めたくなる、そんな小説でした。
これ、角川ホラー文庫なんですね。いわゆる、心霊的なホラーとはちょっと違うけど、心理的な、人間の奥底にある情念の怖さ・・・とでもいうのでしょうか。
「津山30人殺し」を題材としてる小説ですが、いわゆる残虐シーンというのは、終わりの数ページしかありません。事件を知るある女性の回想から始まり、それぞれの章が、主人公である事件を犯す男に何らかの関わりを持つ人たちの物語。それは、肉体的な関わりや、精神的な関わりや、世間的な関わりや。いろんな形での関わり方が、事件への布石となり、最後の最後、陰惨な出来事が発生する。
岩井さん自身が岡山県出身なんですね。だから、方言もリアルだし、取材もすごくされたんでしょう、情景とか状況が目に浮かぶようです。なんというか、田舎の山村の、ねっとりとした空気・・・のんびりとした日本の原風景、というものの裏に隠された、人の汗の臭いとか、体温の高さとか、それらがすごく伝わってきました。そして、もとを辿れば、みんなが血が繋がっている、その血の濃さに、身震いしそうでした。その濃さが、嫉妬したり、憎悪したり、愛したりする度合いを、何より高めているような。畏れられている森の、その不気味な様が、ありありと思い浮かぶ、そんな小説でした。
ドラマ版「砂の器」で、本浦千代吉も大量殺人を犯しましたが、あれにも、悲惨な背景があり、それも、ある寒村での事件で。おそらく、この「津山30人殺し」をモチーフにしてるんでしょうけど。
『人を殺す』理由は、それぞれで、だからといって、どんな理由でも決して、人を殺すことを肯定してはいけない。でも、罪を罪として裁く時、ただ人を殺したことのみ取り上げるのは、理不尽なことなのかもしれない。「家庭の境遇うんぬん〜」は、理由にならないと私は思うけど。でも、真実を知った時、殺された人に憎しみを抱く事件も、現実にはあったりします。
私が生まれる少し前に起こった、いわゆる「尊属殺人罪」をのちのち廃止するきっかけになった事件。詳しくは書きませんが。この事件の犯人の人生を知った時、涙が出そうになりました。もし、それが私だったら・・・と思ったら。そして、犯人と殺された男の間に生まれた子供たちの人生を思ったら。犯人が、それまで、どれだけの恐怖と憎しみと諦めを、その心の中に閉じ込めていたのかと思ったら。悲しく、そして、とても怖くなりました。
もしかしたら、”どうやって殺したか”を知るより、”なぜ殺すに至ったか”を知ることの方が、本当は怖いのかもしれません。
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